ひとつひとつに命を宿す「七宝焼き」!職人はどういったことをしている?

ひとつひとつに命を宿す「七宝焼き」!職人はどういったことをしている?

職人というとどういった人を想像するでしょうか。毎日工房で同じような作品制作をしていると、思っている方もいるでしょう。工房で作品を作っているイメージは決して間違ってはいませんが、同じようなものを作っているわけではありません。職人の技術と知恵で多くの新作が生み出されていることは、意外と知られていません。

こちらの記事では、職人が七宝焼きでどういったことをしているのかを、紹介しています。

七宝焼き職人はさまざまな技法を使って制作している

七宝焼きと一言でいっても多くの技法があり、細かく分けると10種をこえるほどとなっています。七宝焼きの技法は、大きく「有線七宝」と「無線七宝」のふたつに分類可能です。職人はすべての工程を手作業でおこない、作品に命を宿しています。

それではどういったことをしているのでしょうか。職人がおこなう制作過程を知ってもらうために「有線七宝」を例として、ひとつずつ解説をしていきましょう。

素地を作ることからはじめる

「素地」とは土台のことで、銅や銀の板を作る物の形に切り出します。切り出した素地は木づちでたたいて曲線を作ったり凹凸をつけたりします。釉薬の盛り付けで割れにくくなったり凹凸でグラデーションができたりするのです。

素地に使われる金属は成形のしやすさや釉薬との相性などから、銅や銀が多く使われています。出来上がった素地に釉薬を盛り、焼成をすることで七宝焼きのベースが出来上がります。

素地に植線をほどこす

「植線」とは銀線を素地に立てていくことで、この植線こそが「有線七宝」で一番重要な工程といえるでしょう。描きたい模様や輪郭通りに銀線を置くことで、立体的に浮き上がらせられます。銀線自体が仕切りとなるので多くの色の釉薬が盛れるだけでなく、銀線自体も光るので一段と美しい仕上がりになるのです。

銀線はピンセットを用いて曲げるので非常に繊細な作業です。思い通りに加工するには10年かかるといわれています。

施釉で色を差していく

「施釉」とは色付きの釉薬を差すことで、植線でかたどった模様や輪郭に色を付けていきます。筆やホセ(竹べら)を使って施釉をおこなうので、こちらも植線同様非常に繊細な技術が必要です。ほどよい水分量が施釉のカギとなっているので、職人ならではの技術の高さが光るところでしょう。

焼成をし研磨をする

最後に「焼成」ですが、じつはここまでにも焼成は何度もおこなっております。少なくとも7回、多いと10回をこえることもあります。色を重ねることで深みを増していきますが、釉薬の層が厚くなると割れてしまうこともあり、職人の見極めが肝心な工程といえるでしょう。

仕上げに研磨をおこなうことで美しいツヤのある光沢ができ、有線七宝の完成です。以上が有線七宝の制作工程で、すべての工程のひとつひとつを職人の手で、丁寧におこなわれています。

職人はただ作るだけではない!技術を追い求める「先駆者」である

「職人がひとつひとつを手作りしているとはいえ、慣れればそこまで難しいものではない」と思う方もいるでしょう。なんでも最初はたいへんなものの、身につけば文字通り「作業」になるだけと思うかもしれません。それは誤りであり、職人はただ作るだけではないものです。常に技術を磨き・追い求める「先駆者」としてあり続けています。

七宝焼きの発祥の地では多いときで、200をこえる窯元がありました。しかしいまでは、8軒にまで激減しています。これは七宝焼きをおこなう職人の数が減り跡取りも育たないことや、七宝焼きの需要が減ってしまったことも原因だと考えられます。

そこで職人の方々は伝統のある七宝焼きを途絶えさせないように、魅力を最大限に生かした新しい七宝焼きの形を探し、切り開けたのです。新たな可能性を開き視野も広げるその姿勢こそが、職人がただ作るだけではなく、技術を追い求め続ける「先駆者」だといえます。

職人以外でなにかやっているの?

職人だけで生活をしている方もいるものの、それ以外にさまざまなことをやっている方も多いものです。たとえば「七宝焼き窯元○代目」でも自身のブランドを立ち上げ、七宝焼きを使ったアクセサリーの制作をしている方がいます。

七宝焼きの体験教室や実際に七宝焼きの基本から、高等技術を教える「入会制の教室」を経営されている方もいます。またネットショップにて職人ではなく作家として、制作・販売している方などさまざまです。

失われつつある伝統工芸の素晴らしさを世の中に広め、後世まで技術を伝えるために職人の方々は、さまざまなことをやっているのです。

まとめ

まとめ

七宝焼き職人はさまざまな技法を使い分け、多くの作品を生み出しています。土台を作ることから仕上げまでのすべてが手作業なので、いかにたいへんなのかがご理解いただけるでしょう。職人はただ作るだけではなく、伝統のある七宝焼きを途絶えさせないため、常に技術を追い求める「先駆者」として日々精進しているのです。

そのために職人と並行して別で七宝焼きを使ったアクセサリーショップを経営している方、体験教室をひらく方など、さまざまな方法で七宝焼きを広める活動などされています。

「畠山七宝製作所」 では七宝焼きの制作・販売だけでなく、百貨店や文化館・ホテルなどで展示会や実演をおこなっております。少しでも七宝焼きに興味がございましたら、お気軽にご来店・ご来場ください。