2024年04月01日

七宝焼きの種類にはどんなものがある?素地・模様・産地に分けてご紹介

七宝焼きの種類にはどんなものがある?素地・模様・産地に分けてご紹介

七宝焼きは、日本が誇る伝統工芸品の1つです。
日本に七宝焼きがやってきたのは、6世紀ごろともいわれており、その長い歴史の中で、さまざまな種類のものが生み出されてきました。

そこで今回は、七宝焼きについて、素地・模様の付け方・産地という3つの観点からそれぞれの種類についてご紹介します。

素地の種類について

七宝焼きは、素地の種類によって大きく3つに分けることができます。素地とは、七宝焼きの土台になる材質を指し、加工のしやすさから銅や銀などの金属が多く使用されています。

銅胎七宝・銀胎七宝

銅胎七宝というのは、銅から作られている七宝です。もっとも一般的であり、七宝焼き体験セットなどで使用されているのも、この銅胎七宝となっています。

銀胎七宝というのは、素地が銀で作られている七宝です。銅よりも白っぽい色をしているのが特徴で、その分発色が良いのが魅力となっています。釉薬は、半透明や透明のものが使用されています。

陶胎七宝

陶胎七宝というのは、その名の通り素地が陶磁器で作られたものです。基本的な七宝焼きの定義としては、金属を素地とするものと言われているので、その定義からは外れてしまいます。しかし、長い七宝焼きの歴史の中では、江戸時代頃から明治時代初期まで多く用いられてきた歴史があります。

残念ながら、金属の素地に比べると釉薬の発色が劣るため、その後はあまり作られることはありませんでした。

銀張七宝

銀張七宝とは、ベースとなる銅に銀箔を張って、その上から釉薬をのせたものを指します。銀箔を張るためには、まず銀箔に細かな無数の穴をあけ、より柔らかくする必要があります。その後、たゆまないように細心の注意を払いながら素地に張りつけたら、温度を管理しながら慎重に焼き付けていきます。銀胎七宝のような輝く美しさが魅力で、とくに明治20年代後半から30年代後半には大変な人気を集めました。

七宝焼きの模様の付け方による種類

七宝焼きの模様の付け方には、大きく分けて3種類があります。ここでは、それぞれの特徴をご紹介します。

有線七宝

有線七宝とは、その名の通り金属の線を使って模様を描いていく手法です。まずは、銀線を熱して形作ったらピンセットで固定し、さらに高温で熱して定着させます。そして、釉薬を銀線の中に入れて色をつけたら、さらに熱して完成です。七宝焼きの中でも、とくに代表的な手法で、繊細な図柄を表現できるのが魅力となっています。

無線七宝

無線七宝は、金属の線を利用して模様を描き、釉薬で色をのせるところまでは有線七宝と同じなのですが、焼成する前に金属の線を取り除きます。そうすることで、より釉薬の境界がぼかされ、柔らかい雰囲気の仕上がりになります。

そのほかにも、筆を使って模様を描く「描画七宝」も、無線七宝の1つといえるでしょう。また、フリットと呼ばれる、粉末にされる前の七宝絵具の粒を使用する「フリット七宝」なども無線七宝の1つです。

有無線七宝

有無線七宝というのは、有線七宝と無線七宝を組み合わせた技法です。図柄がくっきりと見える有線七宝と、ぼんやりとした表現ができる無線七宝を組み合わせることで、全体に遠近感を出すことが可能になります。東京赤坂にある迎賓館には、有無線七宝の飾り額が飾られていることでも、知られています。

七宝焼きの産地別の種類

七宝焼きには、日本にいくつかの有名な産地があり、それぞれの作品の傾向に違いがあります。ここでは、代表的な産地である東京と尾張の七宝についてご紹介します。

東京七宝

東京七宝は、その名の通り東京・北関東の地域ブランドで、主に北区・台東区・荒川区などで生産が続けられてきました。その始まりは、江戸時代の初期にさかのぼり、平田彦四郎が朝鮮からやってきた技術者に七宝焼きの技法を学び、色付けしたのが始まりといわれています。その後、彼は徳川幕府の七宝師として、美しい作品を世に残しました。

また、明治6年には、政府が勲章の製造を依頼した際、七宝焼家元の平田春行が日本初の勲章である「旭日章」の試作品を作り上げた歴史もあります。このような歴史も持つ東京七宝は、その技術を受け継ぎながら、アクセサリーや小物など日常にも取り入れやすいさまざまなアイテム作りが行われています。

尾張七宝

尾張七宝は、愛知県あま市七宝町を中心として作られている七宝です。桜や梅などの植物や風景など、華やかで繊細な図柄が特徴となっています。尾張七宝は、1830年から1844年にかけて、オランダより輸入された七宝皿を手がかりとして、梶常吉によって生み出されたといわれています。

尾張七宝の特徴は、透明感のあるルビー色をした釉薬です。赤透と呼ばれるこの色は、素地の色を生かした透明感のある作品づくりに欠かせません。製作には非常に手間がかかるため、実用品の製作よりは、壺や飾り皿などの美術工芸品に重きが置かれています。

まとめ

まとめ

今回は、七宝焼きの種類について、素地・模様の付け方・産地という3つの観点からご紹介しました。七宝焼きには、さまざまな技法や表現方法があり、長い歴史の中で現在も進化し続けています。アクセサリーや小物など、日常使いしやすいアイテムも多くありますので、ぜひ手に取ってみてください。

東京都荒川区にあります「畠山七宝製作所」は、東京都知事指定伝統工芸品である東京七宝の製作所です。指輪やブローチ、帯留めなどはもちろん、ユニークな妖怪七宝もご用意しています。オーダーメイドでの製作も承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。